本書は、独立行政法人日本学術振興会科学研究補助金
「平成13年度~平成15年度 少子高齢社会における墓地及び墳墓承継に関する法社会学的研究」(課題番号 13620014)の報告書である。
研究組織 研究代表者 森 謙二(茨城キリスト教大学文学部教授)
交付決定額
年度 | 直接経費 | 間接経費 | 合計(単位千円) |
平成13年度 | 1,000 | 0 | 1,000 |
平成14年度 | 800 | 0 | 800 |
平成15年度 | 500 | 0 | 500 |
総計 | 2,300 | 0 | 2,300 |
研究発表
(1)学会誌等「埋葬と法-家族・市民社会・国家」『法社会学』第 62 号(2005年3月) 「墓・家族・市民社会」『創造』第 34 号(2005年3月)
(2)口頭発表「死と埋葬-祖先祭祀(祭祀条項)との関連で」日本法社会学会 2004年5月 16日「少子時代におけるお墓とその継承」国際宗教学宗教史学会第 19回世界大会 2005年3月
(3)出版物 「お墓の制度と現実」小畠宏充編『日本人のお墓』(日本石材産業協会、2003年8月)
本報告書の構成は次の通りである。
「第一部 無縁墳墓についての研究-無縁墳墓改葬 公告の研究-」では、(1)無縁墳墓の概念、(2)無縁墳墓改葬の制度史、(3)平成 11 年 5 月から平成 16 年3月までの、ほぼ5年間にわたって官報に掲載された無縁墳墓改葬公告 について、それをデータベース化し、若干の分析を行ったものである。なお、この期間の 公告件数は1,125件である。(4)無縁墳墓改葬公告に掲載された墓地に実際行き、いくつか の事例についてその実態を報告している。無縁墳墓改葬手続きの簡素化により、墓地使用 者の権利や死者の尊厳性は護られているのか、多くの問題点も残す結果になっている。と は言え、全体としてみれば墓地の整備も進み始め、無縁改葬の実態も明らかになりつつあ る。無縁墳墓改葬が実際にどのように行われているのか、今後も引き続き調査を実施する 必要があるだろう。
「第二部 野田山墓地の無縁墳墓の改葬に関する実証的研究」では、石川県金沢市の野 田山墓地の無縁墳墓の改葬事情(墓地の整備事業)の実態について報告したものである。 野田山墓地は、もともと加賀藩領主前田家の墳墓地であったが、そこに家臣団が埋葬され、 さらに町人階層も埋葬されるという、全国でも例を見ないような壮大な規模の墓地である。 金沢市による墓地の整備事業は平成2年から始まったが、現在でもまだ道半ばにあるとい って良い。しかし、この整備手続き・方法は、墓地整備事業の一つのモデルであると積極 的に評価したい。
「第三部 愛媛県周桑郡丹原町 墓地(無縁墳墓)に関する意識調査」は、いわゆる過疎農村のおける墓地の継承に関しての意識調査である。アトツギの不在による墓の継承の危機意識がどのようなものであるか、調査者の意識はそこにあったけれども、必ずしも特徴的な結果が出てきた訳ではない。この調査は、丹原町の老人連合会に委託して調査を実施したが、回答者のほとんどがすでに承継者を確保している高齢者であったので、お墓の継承問題に関する危機意識はそれほど強いものではなかった。しかし、潜在的には、次世代において起こるであろうアトツギ問題や、誰にも管理されない無縁墳墓の増加等、これから大きな問題へと展開することは充分に予想できる調査結果ではあった。